2010年12月03日

2,潤滑方法とケース内圧

〜1)ドライサンプとウエットサンプ
 皆さんも知識として、レーシングエンジン=ドライサンプという構図を思い浮かべ、ドライサンプはパワーが出ると認識しているのだが、SRXやSRなど一件スピードや高回転と縁遠いようなマシンでも、ドライサンプを採用する例が有る事でも解るように、設計者も経験値として、ウエットサンプよりは有利だと言うことは認識しているのである。

 特に、コンパクトにまとめられた大排気量ユニットは、ケース内圧の影響を受けやすい。その証拠に、ドライブギヤシャフトに使用されるオイルシールは、エンジン内部が外部と接する部分で言うと、いちばん大きな面積を有する。同じ値の圧力でも、面積に比例して受圧面積が大きくなるので、外に抜けようとする力が働くため、必ずと言って良い程外周を金具で押さえられており、多気筒機種では余りお目にかからない手法である。

 レースのベース車輌となるApeだが、基本設計が50CCであるのに対し、レースで使用するときには125CC迄排気量がアップしてしまうので、内圧によってこのシールが外れることもある。これも、排気量アップに伴って内圧が上昇した証拠となる。

では、ドライサンプとはなんぞや?と言うことに触れると、そもそも旋回Gによってエンジンオイルが傾き、その影響でポンプがオイルを送れなくなって焼き付きを起こすのを防ぐのが、主目的である。

バイク乗りは、キャブでもオイルパンに溜まったオイルでも、特に気にしたことはないであろうが、4輪とバイクの大きな違いの一つでもある。

 バケツに水を入れて振り回してもこぼれない実験を体験していると思うが、正にバイクの燃料もエンジンオイルもこの状態になっているのであり、対して4輪はコーナーリング中でも車体が大きく傾かないために、横Gが長くかかる大きな高速コーナーなどでは、水平だった物が90度傾き側面に張りつくことになる。実際にミッションカート(バイク用キャブレター)が、筑波の最終コーナーでこの状態に(ガス欠)なり、エンスト多重衝突を招き負傷者が出た事もある。
これを解決したのが、ドライサンプ方式であった。

では、ドライサンプと内圧について考えると、故意に圧力を抜かなくても、OIL量が減った(タンクに移った)だけでもケース体積が増えて、内圧も下がることに成り、ウエットサンプに比して、高回転領域での好結果を生むことになる。この結果から、高性能レーシングエンジンは、ドライサンプを選択する機会が多い。

ちなみに、サンプとはオイルパンのことであり、オイルパンが空になるので、ドライサンプ。